モッツアレラチーズ2佰拾漆

朝目が覚めた。男三人川の字になって寝ている。男の燻せき体臭が発ち込めた部屋は3つ床を敷けば足の踏み場もないほどである。そっと万年床となる布団をたたみ、ドアを開けて洗面所に向かった。ドアを開けるとすぐ食堂がある。朝げの温かい香りがぷーんと鼻にやってきた。すでに早出の鳶職の人が古式ユニフォーム姿で飯を食べている。北東建設のこの今井仲町の寮の住人は職種としてとび職の人と土工の人である。僕は土工として雇われた。2週間働くと満期になり、給料が支払われる。僕は入寮した時、所持金が2万円足らずしかなく、初めての給料を心待ちにしている。1日6000円の日当で働いているが食費が1日3食で1500円差し引かれるので実際手に入るのは4500円である。洗顔を済まして、部屋に帰ると山中さんがネグリジェを脱いで仕事着に着替えていた。川端さんはまだ虫の息と言った感じで手をぴくつかせながら寝ていた。部屋から出て、厨房に用意してある弁当を手提げに入れた。弁当は古びた金色のアルマイトの容器に飯を押し付けるように入れたものとタッパに入ったさつま揚げやヒレの付いた飛魚の煮魚などである。朝食はどんぶり飯とみそ汁と昨日のおかずの残り物である。食堂の前には帳場があり仕事用の地下足袋や軍手といったの備品の他にUCCの缶コーヒーとか菓子とハイライトも置いてある。帳場の右には現場別の名札がかかっていて、その日度のどの現場に行くのかがわかるようになっている。今日は僕は三菱重工の工場の現場に入ることになっている。各現場には親方がいる。親方は現場の進行状況を考えて仕事の割り振りなどを指図したりする人である。親方は長期雇用者の人が多い。今日行く三菱重工の工場の現場は方波見さんが親方になっている。三菱重工の現場は建設現場での仕事ではなく、工場内の営繕のような仕事である。朝食を取り終えてから、帳場で地下足袋と軍手を出してもらい方波見さんの運転するバンに4人で乗り込んだ。方波見さんと僕の他は名も知れない新米である。名も知れない新米はあまり信用されていない。昼まで働いて、弁当だけ食べて逃走する通称「トンコ」と呼ばれるものがままあるからである。30分ほどで三菱重工の現場に到着し、箱場に入った。午前中工場内の古くなったコンクリート部分をマキタを使って砕いて除いた。午後ミキサー車が来てコンウチをする。午前中の仕事が終わり、箱場に帰った。親方の方波見さんは杉良太郎似の風貌だが白く光る歯は全部入れ歯だと言っていた。方波見さんは仕事中もそうだが食事の時も洗濯をしたり片時も留まることを知らない人である。僕も勢い同じ調子に合わさざるを得なかった。方波見さんは仕事中僕を見て「ゼロでいいんだな!」と言った。方波見さんは僕が雇われる時話をした人事課の人と繋がりがあるらしく、将来性に言及していた。「営繕課長止まりでねえか!」と北の訛りでトーンを下げていた。

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