モッツアレラチーズ玖拾陸

春になって、今年も裁判所の職員の移動時期が近付いてきた。簡裁民事の安井主任書記官から内々の打診があった。裁判所に入所するときの希望勤務地が出身地の高知だったので高知に帰ってはどうかという話だった。僕の体調不良や勤務成績を考慮して親元での通勤を勧められた。普通に考えれば願ってもない話だった。ところがみんな夢の中で上田さんの影を慕って生活していた僕は「うんにゃ!京都に置いてもらいましょう」と断ったのである。結局僕は4月1日から簡裁民事の支払い命令係に移動することになった。簡裁民事には勉強会などで付き合いのある笹井さんが会計の用度係から書記官の任用試験に受かって書記官として着任していた。任用試験は書記官研修所の試験と違い、実務能力を問われる試験なので難しい。笹井さんはまだ現役コース4年目なので異例なのである。日野さんの話では政策的配慮であろうと言っていた。今度僕が受け持つ支払い命令の仕事は前の略式命令の仕事と仕事の内容はそう変わらない。事件簿を付けたり、支払い命令を書いて裁判官や書記官ののハンコをもらい封筒に入れて送達したりする仕事である。しかし、件数が格段に多く、問い合わせや異議の電話がしょっちゅうかかってくる。簡裁民事はいつもけんか腰の電話応対である。簡裁民事に二人いる高橋さんは二人とも全く隙を見せず、「おたくねー!」と高飛車に相手に切り込んでいく。全く不慣れな僕は電話の応対に出ると「すみません、すみません」と謝ってばかりいるので後の仕事に間違いが多くなってくる。この様にして、仕事は山と積まれ、作業は遅々として進まず、垂れもつれて、昼休みもない残業状態に。今日も残業で遅くまで残って仕事の処理をしていたが、簡裁民事の部屋では仕事を終えて囲碁を戦わしている人もいる。僕が帰りしな、囲碁を止めた室谷さんが「お好み食いに行こか!」と声をかけた。室谷さんは小太りで40がらみの中年だがはいつも昼休み総務の山際さんと卓球をしている。快活な室谷さんは運動不足の僕に「あんた、体は僕の方が若いんちゃうか!」と言った。僕はげんなりした気分になったが一緒にお好み焼きを食べに行った。お好み焼き屋でお好み焼きを食べビールをかなり飲んで店を出た。室谷さんと別れたころには気宇壮大な気分になっており、通りに並ぶ家の門柱を押したりしていた。意外にも門柱は倒れなかった。表通りに出てからも電話ボックスを押したりていたがこれも倒れなかった。そんな風にして丸太町通りを歩き回っている内にたばこ屋のショーケースを壊してしまった。タバコ屋のおばさんが警察に通報して、ほっつき歩いているところを職務質問された。酔いはさめていたが、みんな夢の中だった。パトカーに乗せられて二条署に連行されて身分証明などをさせられた。裁判所の職員ということがわかって、裁判所と連絡を取り安井主任が引き取りに来てくれた。帰り、喫茶店で安井主任は僕に病院に通院するように強く勧めた。しばらく仕事を休むこととしてタクシーで高徳寺の下宿先に帰った。  

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