モッツアレラチーズ2 捌拾玖

裁判所に勤め始めてからもう4か月経っているいるが、まだ仕事は板に付いていない。事務作業は向いてないなと思いながら事件簿に日付印などを不器用な手つきでガチャリ、ガチャリと打ち込む。中野君が前任者の河井という事務官は神業のようなスピードで連続して事件ナンバーを打ち込んでいたともたつく僕を流し目で見ながら話した。午前中、仕事の途中で手錠をかけられた若い女が警察官に連れられて略式の部屋に入ってきた。風俗営業等取締法違反ということであった。物々しい雰囲気がゆったり進んでいた略式の部屋の空間をを切り裂いて緊迫感が漂った。アルサロの女が出て行って直ぐに人事課の上田さんが入ってきた。中野君に北海道旅行の時の写真を渡していた。中野君はなんと人事課の上田さんと刑訟の岩崎さんと3人で両手に花の北海道旅行に行ったのである。豊中人丸出しのだらしない顔で電車の窓際に座っている中野君の写真を見た。上田さんはこの旅行の際、頼まれて買ってきた壺に入ったバター飴が重かったのなんのとぼやいていた。上田さんが出て行ってしばらくしてからお昼のチャイムが鳴った。中野君と一緒に昼食を取りに出た、途中日野さんと会ったので3人で「ドラマ」という喫茶店に入った。ここの奥さんはダニエル・ビダルを思わせる日本人離れした顔立ちをしている。日野さんが焼肉定食を食べている間、僕は野菜炒めのキャベツをつついていた。昼食が終わって、中野君は仕事があると言って先に仕事場に帰った。僕は日野さんと一緒にコーヒーを飲みにクラッシック喫茶「碌山」に行った。店内は静まり返った中にハチャトゥリアンの「剣の舞」がかかっていた。茶色のスリーピースで足を組みコーヒーをブラックで飲む日野さんの隣でコーヒーシュガーをたくさん入れ、ミルク入れに入っているミルクを全部入れた。コーヒーは茶色というよりは白味がっかっていた。午後の仕事に戻った。中野君は相変わらず達筆で略式命令を書いている。僕の仮名釘流の字がさして伸びがないのに対し、段の付いた字の中野君の字は伸び伸びしている。事務作業に時間がかかりすぎている僕はこれから先が思いやられる。略式係は裁判所内でも最ものんびりした仕事場だからである。一行書くのに何分かかっているのだろう。聖書に出てくるお腹にいっぱい人の入ったお魚のような気分だ。お魚はたいして事務の仕事ができないに違いない。終業のチャイムが鳴って中野君が通路に吸い込まれていった。事務机の前を片づけて夏物のジャケット姿で部屋を出た。裁判所の中央から出て寺町通に出る前に日野さんに力強く肩を「ぶわしっ!」と叩かれた。日野さんは僕のジャケットをちらりと見て「どうした!チンピラヤクザみたいな恰好をして」と嘲った。僕の格好と言えば白地に細い黒と赤の格子の線の入ったジャケットにグレーのズボン、ブルーのボタンダウンのシャツというものであった。センスの違いに驚きながら日野さんと並んで寺町通り、御池通と歩いた。6時を過ぎて日野さんと一緒に夕食を取るために「しのぶ寿司」に入った。しのぶ寿司はチェーン店で各地にある。ここは寿司屋なのになぜか僕の頼んだ釜飯は直ぐに来たが、日野さんの頼んだお寿司セットは40分経っても運ばれてこなかったのである。流石に温厚な日野さんもしびれを切らし、まだできないのかとウエイトレスに言った。ウエイトレスは初めて気付いたように了解した。ところがそれでもまだ10分、15分とお寿司セットは来なかった。日野さんが意を決して帰ろうとした瞬間、待ちに待ったお寿司セットが運ばれた来た。日野さんは野武士のようにお寿司を胃の腑に収めていた。日野さんと別れて紫竹の下宿に帰った。夏場で汗になったので銭湯に行くことにした。銭湯は近くに2件あるが、遠くの歩いて15分くらいかかる「初音湯」に行った。風呂の帰り道、自動販売機でバヤリーズオレンジを買って下宿に帰った。サウナに入った時は喉が渇きすぎるのでジュースを2リットルも飲むとお腹はチャッポン、チャッポンいう。

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