モッツアレラチーズ2 捌拾肆

京都の春ももうたけなわ。7回生になった。5回生、6回生と1単位も落とさずに登録した単位が取れたので今年全単位取得すれば無事卒業できる。とはいうものの3年も留年すると就職に関して同志社大学のネームバリューはあまりない。僕は法学部の法律専攻なので公務員試験を受けて公務員になるか、マイナーな就職口を当たるしかない。従って、就職準備は公務員試験の勉強ということになる。公務員試験はどれも夏場にあるので時間はそれほどない。せいぜい過去に出題された問題を解いて備える程度である。6月、7月と京都市役所上級職、裁判所職員上級職、裁判所職員中級職と受験することにしている。試験は知能教養試験と専門知識の試験である。ありがたいことに5者択一の試験がメインなのでなんとか合格できる気にはなっている。流石に論文試験となると筋の通った法律的な文章を書くほどの確実な知識はない。法律的な知識は全て有漏覚えの付焼刃的なものなので論文試験の答案はしどろもどろとなるであろうことが予想される。昇華学会員で来年卒業予定である京都産業大学の安藤君と松野君も公務員試験を受けるので時々僕の部屋で一緒に勉強している。3人して一緒に問題を考えるのだが、松野君に問題の要旨を説明して、考えを求めるとしばらくあーだこうだと頭を捻った挙句に「わかれへーん!」と頭を抱えると言った調子である。3人での勉強会が終わって、階下へ降りると、郵便受けに大阪の稲田さんからの手紙が届いていた。稲田さんから手紙が来たのは下宿には電話機がないし、公衆電話では硬貨を用意するのが大変なので文通になっているからである。手紙の内容は、例えば僕からは「稲田さんお元気ですか?僕は元気です。」と言った調子のものである。稲田さんの手紙の字は上手ではないが丁寧でしっかりした字だった。稲田さんは今日山東さんと一緒に京都に出てくるが、山東さんは他に用事もあるので午後1時にフリーになるということである。それではということで1時に僕は稲田さんと京極の平野屋で待ち合わせて、岡崎の動物園に行くことになった。平野屋に着いて1階の通りがガラスで透けて見える席に座った。稲田さんはまだ来ていなかったので、来た時に合図ができるようにと考えたからである。店の前の道に長身の稲田さんの姿が現れた。ピンクと水色のパステルカラーのチェックのシャツに濃紺のタイトスカートそして膝下まであるベージュのブーツというスタイルだった。165㎝程の長身で白い顔がまるでモデルのようだなあと思いながら「いなかっぺ大将」の風大左衛門のように労働者のような大きい右手を挙げて合図をした。稲田さんが喫茶店の中に入ってきて席に着き話をした。一緒に動物園に行くことにしたのは特に動物に親しみを感じているからではない。動物と言えば実際は奈良公園のシカが見たいとは思っていた。シカが見たいと思ったのは学校の英語のテキストとは別に読んでいるジョージ・オーウェルのエッセイの中に、シカを食べようと思って飼っているとシカはそれに気づいてジョージ・オーウェルを嫌い、食べ物を食べ終わるとすぐに角でこうこう突いてくる来るという話が興味深かったからである。2人で喫茶店を出て京極から三条、御池と歩いて岡崎の動物園へ歩いていく途中、稲田さんがすれ違う山口君を見止めた。僕は何となく声をかけず、山口君は知ってか知らずかそのまま通り過ぎていった。岡崎の動物園でキリンを見た。キリンの前のベンチでキリンの精細画を描いている画家がいた。稲田さんはその精細さに驚いて僕に声をかけた。一頻り園内を巡り、虎の檻の前の立て看板に「餌をやらないでください!」とあったが、虎は肉以外の物も食べるのだろうかと訝しく思いながら動物園を出た。帰り午後5時阪急の駅まで稲田さんを送って行った。 

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