モッツアレラチーズ2捌拾

京都の暑い夏もうそろそろ終わりが近づいてきた。5回生になってから授業には順調に出ている。その反面昇華学会の組織に組み入れられて、大学の校内にいる時も下宿にいる時も話をするのは東山にいる山口君を除いて昇華学会員ばかりである。最近では昇華学会の座談会や京都本部で行われる学生部の幹部会などに駆り出される始末である。10月には衆議院選挙があることが決まっている。住民票は京都に移してあるので衆議院選挙は京都で投票することになるのだが、自分が投票するばかりでなく、選挙活動をする羽目になってしまった。昇華学会はこれを支持母体とする共明党を会長の武田倍尺の肝いりで結党している。昇華学会員は共明党に投票するだけでなく選挙活動を強制される。今度の衆議院選の京都での共明党の候補者は竹内勝彦と西中清だ。昇華学会では選挙の1ヶ月以上前から選挙活動を始める。僕はいつも下宿で暇そうにしているのですぐに声がかかった。学生部は勤め人と違い選挙活動の時間があるので各区に分かれて応援に入る。僕はよく下宿に話をしに来る京都産業大学法学部の安藤君と一緒に竹内勝彦の選挙区である左京区の応援に入った。左京区の銀閣寺周辺の昇華学会員のお宅を回って票固めをするのである。昇華学会では票固めをすることを「Fを取る」という。僕は安藤君と一緒に間近に迫っている10月の選挙に向けて週に何回か銀閣寺周辺を回っているが、今は婦人部の大B担の家にお邪魔している。この人は年齢不詳だが年より老けて見える、はすっぱな感じの女性である。年より老けて見えるというのはこの家には2人の娘がいるが中学生になっているかいないかという年頃だからである。不惑前であろう。この婦人は安藤君を「一休さん」と言って優し気に声をかけるので、安藤君は気を良くしたらしく、この婦人や2人の娘を美貌だと言って褒めそやしていた。僕は安藤君がテンパーで額が広いから「一休さんか?」と思いながら、婦人から聞いた住所を基にFを取りに歩いた。F取りが終わってから銀閣寺からほど近いところに住んでいる山口君宅を訪問した。瀬尾マンションの2階のチャイムを鳴らすと山口君がドア口に出た。山口君は精神的な不調が続いているようだったが、何年かかっても東大に入ると、気力は失っていなかった。ただ、コツコツと問題を解いたり、必要な暗記を積み重ねているというよりかは心理学関係の専門書を読み耽ったり、大江健三郎や高橋和巳の「孤立無縁の思想」などを読み耽り、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」で止めを刺していた。僕は土産に買ってきた和菓子を山口君が食べそびれているのを尻目にパクパクと口に運んだのであった。山口君は「東京へはもう何度も行きましたね」を口ずさみながらインスタントコーヒーをごちそうしてくれた。

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