モッツアレラチーズ2 漆拾漆

同志社大学法学部法律学科5回生。上賀茂の学翠荘に移転してから2か月が経ち下宿の周辺や上賀茂の道路事情なども分かりかけている。下宿の2階の部屋も2つ空室があったが両方と大学の新入生が入居している。廊下の北側に位置する向かい隣りが京都府立大学農学部林業科の前田君、その西隣の部屋が立命館大学工学部化学科の北川君だ。2人とも律儀な人でスルメイカを持って入居の挨拶に来た。僕は2人に5回生だということを隠していた。僕は風体が新入生と変わらないぐらい若々しかったし、怪しいおっさんだとは思われたくなかったからである。朝起きると9時を回っていた。前田君が部屋に来て、朝飯を買いに行くが何か買ってくるものはないかと言われたので、サンドウィッチと紙の容器に入っているグリコのカフェオレを頼んだ。床から起きて洗面所で顔を洗い、前田君に買ってきてもらったサンドウィッチとグリコのカフェオレをパクパク、ストローでチューチューと飲み食いして朝食を終えた。日曜日なので授業はなく、どこかに出かける予定もないので下宿でのらくらと過ごそうと思っていた。単位の習得がこれから毎年崖っぷちで1単位も落とせないので授業をさぼって出席日数不足で単位を落とすことは許されない。即ち、出席を取る授業は休めないので休日を除けば毎日学校に通わなければならないのである。そこで今までになくバスも定期券を購入している。下宿でのらくらできるのは日曜しかない。前田君が買ってきてくれた「平凡パンチ」という週刊誌をパラパラと捲っていた。この雑誌は1ページ目が煽情的な若い女の半裸の写真などを掲載しており、記事の内容も若い男が好みそうな俗なものである。この雑誌はおそらくイギリスの「パンチ」という有名な雑誌の模倣だろうがユーモアやイロニーと言った高尚さは微塵も感じられない。自分の精神状態の危うさを察知する間もなく時間は過ぎていく。昼過ぎに部屋をノックする音がした。「どうぞ!」というとドアを開けて中年の婦人が3人ドア前に居た。昇華学会の婦人部であった。昇華学会は岩倉の兵庫荘に居た時には4年間一度も姿を現さなかったのに!婦人部の人は「昇華学会婦人部の高田と言います」と名を名乗った。宗教のことを尋ねられたので、実家では父が日蓮法華宗の信仰をしているが、父に禁じられているし、自分もまた昇華学会に入会する気はないと答えた。高田という人は上賀茂支部の婦人部長で、「みんな夢の中」を歌っている歌手の高田恭子のお姉さんだと連れの婦人部の人が言った。入会する気がないにしても昇華学会の機関紙である「拝教新聞」を購読しないかと勧められた。話が長時間にわたったので押し切られて仕方なく「拝教新聞」を3か月だけ購読することで合意を見た。婦人部の人が帰って、心に鉛のような重さを抱えながら昼食を取りに中華料理屋の「珉珉」へ出かけ、「ふようはい」を食べた。昼食を済ませ下宿に帰った。日曜日下宿に籠っていても飲み食いしているか、テレビを見ているか、くだらない本や漫画本を読んでいるかでほとんど勉強には手が付いていない。昇華学会に襲われるわけだと思いながらテレビのチャンネルをガチャガチャと回した。8っチャンネルの関西テレビでは平日は午後人気番組の再放送がよくやっているが今日は日曜なのでない。テレビを消すと部屋の戸口で北河君が「先輩、暇ダラー」と三河弁で声をかけた。

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