モッツアレラチーズ2 陸拾玖

日差しが強く裏山では緑の中でセミが鳴いている。京都は盆地なので夏は気温が他の地方よりも上がりやすい。もう前期試験も終わって、大学での授業は行われていない。すぐに帰省しようと思ったが高知に帰る前に山口君と東京にいる岡崎君の所に行くことになった。山口君は東大を受験するかもしれないので下見も兼ての上京である。正午前に岩倉から電車で一乗寺まで行き、一乗寺の山口君のアパートの前からタクシーで京都駅まで行き、新幹線に乗って東京に着いた。東京から山手線の電車に乗り地下鉄を乗り継いで上板橋で降りた。上板橋で書いてもらっている地図を頼りに岡崎君の下宿を尋ねた。午後4時に下宿前で待ち合わせていたので下宿前に来ると甚平姿の岡崎君がいた。岡崎君に案内されて2階の部屋に通された。4畳半の炬燵の他には何もない部屋であった。下宿の隣の部屋は中学、高校と同じだった中谷君が住んで居るという。話をするために部屋を訪ねたが中谷君は留守であった。中屋君は日大芸術学部で彫刻をやる傍らボクシングをやっているということで、部屋には全身鏡とボクシンググローブが置いてあった。岡崎君の部屋に戻って話をした。岡崎君は結局浪人3年目を断念して東京の会計の専門学校に通っているということだった。話も尽き、することもなかったのでチェスをすることにした。岡崎君と僕が対局した。局面は僕がかなり優勢であった。岡崎君は「考えてきゆうねや!」と顔をしかめ、頭を捻っていたが、ナイトで両取の手を考えて指した。僕はクイーンが当たりになっているのに気づかずポーンを前に進めた。岡崎君は満面の笑みを浮かべて僕のクイーンを盤上から取り去り、ナイトを動かした。「ちょっとこれ待ってくれん。」と僕は青ざめた顔で岡崎君を見たが、岡崎君は「ダメダメ、待ったなし」と冷淡な表情になった。クイーンを取られてからは岡崎君のクイーンが縦横無尽に活躍し、僕は勝負を落とした。次に岡崎君と山口君が対局した。山口君はいろいろ理屈を言う割に差し筋は悪く、関係ないところでタイミング悪く好きな王の入城をしたりして岡崎君に駒を進められ勝負を落とした。午後7時を回ったころに中屋君が帰って来て、話をした。明日日大芸術学部の彫刻をしている現場を見学しに行くことで話を終えた。その日は山気口君と二人岡崎君の下宿の部屋に止めてもらった。3人分の床を敷いて僕が膝を立てて寝ていると山口君が岡崎君に「スポーツマンがこういう寝方をするがぞ!」となにやら意味ありげな説明をしていた。翌日昼前に岡崎君の下宿を出て山口君と2人で練馬区の江古田にある日大芸術学部を見学に行った。日大芸術学部で中屋君と落ち合った。中屋君に案内されて校舎前に出ると人の顔型の彫像が並んでいた。中屋君はゴーグルをつけて作業をして見せてくれた。中屋君は彫刻とボクシングで消耗した翁のような顔に見えた。お昼を過ぎたので中屋君の案内で日大近くの食堂に行った。食堂で3人ともレバニラ炒めを注文して食べた。山口君はうまそうにレバニラ炒めについての蘊蓄を傾けながら食べていた。3時過ぎに中屋君に別れを告げて岡崎君の下宿に戻った。岡崎君の下宿から荷物を下げて山口君は東大の下見に、僕は高知に帰省することになった。山口君は茶色のズボンに開襟シャツを着てローデンストックの眼鏡をかけ、アタッシュケースを下げて「白い巨塔」の財前五郎のイメージで颯爽と歩道を歩いて行った。

お知らせ

遅いパソコンのスピードアップ!!

性能が低いHDDからSSHDやSSDに

ディスクのクローンで丸ごと引っ越し

OSの起動スピードが速くなる