モッツアレラチーズ2 伍拾伍

夏も過ぎてもう秋が来る。栗の木には実が青々と成っている。遅い朝食を済ませ、3階に上がった。部屋の間仕切りの障子を開けた。弟の部屋は良く整頓されている。弟の書棚は学習参考書と尺八の楽譜の曲集、カメラの本、鳥の図鑑、外国や日本の小説などがきちんと並べられていた。荒れている僕の生活に比べて弟は整っているなあと思った。障子を閉めて、旺文社のラジオ講座のテキストとチャート式新総括日本史を小さなビニールの手提げカバンに入れた。今日は予備校に行かず、県民図書館で勉強しよう。県民図書館はお城の追手門のすぐ東の藤並神社の20メートル西北に位置している。永国寺の家から歩いて10分ほどで着いた。2階の閲覧室を除くと追手前の卒業生で自宅浪人をしている岡崎君や二宮君が集中して本を読んでいる様子が伺えた。静まり返って、聞こえてくるのは緑の中の蝉の声の室内で、音をたてないように空いている席を探していると岡崎君が僕の肩を指で突いた。岡崎君と一緒に室外に出て話をした。岡崎君の中学からの知り合いで同じ追手前高校卒の山口君を紹介するという。山口君の家は相模町という所にあった。相模町は愛宕町にある愛宕中学校の直ぐ西隣の地区である。山口君の家は2階建ての小さな家だった。玄関か勝手口かという戸を開けて岡崎君が山口君を読んだ。玄関口には4足ほど靴が脱いであった。岡崎君と二人で山口君について2階の山口君の部屋にお邪魔した。2階には追手前の卒業生の上田君と中越君それと留年してまだ3年生の島岡君がいた。初対面だったので山口君に簡単に自己紹介をした。山口君は僕に「桂三枝に似ちゅうねえ!」と言った。僕は自分の顔立ちが全く桂三枝に似ているとは思っていなかったので落語家のような雰囲気を漂わしているのかと訝った。山口君は2階の2部屋を占有していた。部屋はことの他散らかっており、受験参考書とか通信添削の雑誌が辺り一面に散乱していた。山口君はクラシック音楽のファンらしくショパンやベートーベンなどのレコードをたくさん所有していた。「これがツートラ・サンパチぞ!」と大掛かりな録音装置を見せびらかし、高級そうなアンプなやスピーカーなど使って音楽を聴かしてくれた。山口君はサイフォンコーヒーの愛飲者らしく部屋にはサイフォンやコーヒー豆のミルが置いてあった。話が一頻り続き、山口君は皆に「レストランに飯を食いに行こう。おごっちゃおき!」と言い放った。それではと5人で飯を食いにに出かけた。相模町から10分ほど歩いて、愛宕の大通りの交差点のところにある「ゴヤ」というレストランに入った。僕はオムレツ定食を注文した。山口君は皆に「くえ!くえ!くえ!」と言っていた。このレストランのゴヤという名は有名画家の名を取っている。山口君は小学生の時絵で文部大臣賞を取ったと言っていたので成程と思った。山口君が勘定を持ちレストランを出た。山口君の家を辞して、岡崎君と一緒に県民図書館に戻った。県民図書館で旺文社のラジオ講座の予習をしていたが、身が入らず帰宅することにした。家に帰って、3階に上がると弟が間仕切りの障子をあけて尺八を吹いていた。障子を開けた方が明るく風通しもよいからである。弟は障子を閉めようかと言ったが、「最近腕が上がっちゅうねえ!」とだけ僕は答えた。弟の尺八はもうそろそろ都山流の師範の免許が取れるほどになっていた。弟は全く充実した高校生活を送っている。土佐高は女子学生との交際とかないのだろうかと思った。弟の陰の部分を僕は全く知らないが。

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