モッツアレラチーズ2 肆拾捌

秋になって、栗の木に山からやって来たふくろうがほーほーほーほーと鳴いている。朝、階下に降りて洗顔し、歯を磨いている。隣の台所で母が忙しく朝食の用意をしている気配が伝わってくる。母は病院の事務の仕事で毎日出ている。家にいる時も炊事や洗濯などの家事をしているので話す機会は少ない。暇な時は柔軟体操など体の手入れをしたり、父と買い物に出かける。僕は日頃剣道着の洗濯などで母には世話になっているのでなんでも「はい、はい」と答えている。母は偶にしか仕事をしてない父よりも収入が多いこともあって身なりは地味だが奥さんというよりは独身女性のような雰囲気もある人なのである。洗顔を済まして3階に上がると弟が2段ベッドから降りてきた。弟は最近僕よりも遅くまで勉強をしている。弟は勉強より尺八に力を入れているようだが、勉強の方もどうして、どうしてという学生なのである。朝の食卓に4人揃って食事が始まった。父が「ばりんぼりん、ばりんぼりん」と歯切れのいい音をされながらたくあんを食べる。僕が焼き鮭を食べ終わり、父の分のしゃけをじっと見ると父が「もーしゃけない!」と言ってしゃけに箸を伸ばした。父は食事を終えて、丹前の袂から器用にしーはーしーはーする爪楊枝の入ったビニールケースを取り出す。慌ただしい朝食が終わって、弟と一緒に駐車場から自転車で学校に出かけた。今日は1時限目に時間を取って第1回旺文社の模擬テストの解答と講評・評価の返却があった。旺文社の模擬テストは全国統一で実施するので受験者数が多く、志望校の合格可能性などは比較的信頼が置ける。今回僕は私立文系コースを選択し、受験科目は英・国であった。返却された答案を見てみると英語41点、国語56点である。校内では両科目とも50番以内だが偏差値は56.9。早稲田大学法学部の合格可能性25~49%となっていた。これでは通らん!と思いながら前の席の福島君の成績を見ると英語70点で偏差値69、校内で1位。福島君は電気通信大学を目指している3年5ホームではトップクラスの秀才だが、英語70点で校内1位は少し意外だった。ざわついた雰囲気で担任の竹内先生から模擬テストの講評や受験のことについて話があった。1時限目が終わって、2時限目は10月に行われる文化祭の出し物を決めることになった。出し物を決める話が進んだ。そうして演劇部の伊藤君のリードで夏目漱石の「坊ちゃん」の1シーンをやろうということになった。次いで、役決めに入ったが他のククラスから闖入した共産党の門田君が僕の名前が浦成なのでうらなり先生の古賀の役をやれと言った。門田君は共産党の門田として学年内では名が通っている。それで、この提案は分けもなく通った。結局、主役の坊ちゃんを伊藤君、マドンナが宅間さん、野太鼓を福島君、赤シャツを田村君、うらなりを僕が演じることになった。僕はマドンナから心ひそかに思われる数学の担任のうらなり先生こと古賀の役である。宅間さんは平安時代の女官のような古代日本女性のような顔立ちの女性なのだが。僕は全く芝居っ気のない人間なので多分セリフの棒読みになるなー!と思いながらしぶしぶ引き受けた。授業スケジュールは遅滞なく進み、授業の終了を知らせるチャイムが鳴った。剣道部の部室を開けると角田が椅子に座って薄暗い明りの中で明治大学の赤本を読んでいた。「勉強の方は進みゆうかえ!」と声をかけると、「部の方も3年生は受験やき、もうそろそろ2年生に後を任せんといかん!」と答えた。今度の剣道部は県体などどの大会もベスト8止まりで入賞ができなかった。やはり、時間制では時間として稽古量の多い他の剣道部に追いついていけないと思った。団体はともかく、優れた個人技を磨くのは難しい今の剣道部の体制である。学校の帰り桝形にある日進館書店によって中央大学商学部の赤本を買い、家に帰って3階の自室で読んだ。中央大学商学部を第2志望にしようと思っている。法学部は司法試験、商学部は公認会計士試験と専門職を目指せる。早稲田も中央も専門職の国家試験の合格者が多い大学なので、これが志望動機となっている。赤本の試験問題を見たが、中央も今の力では到底合格点は取れそうもない。く浪人の文字が弟の尺八の音に乗って近衛十四郎の「素浪人花山大吉」のシーンの記憶を呼び起こした。

 

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