モッツアレラチーズ2 参拾陸

梅は咲いたか ほーほけきょ。朝起きてパジャマを脱ぎ、学生服に着替えて、外を見ると牛乳配達のおじさんがガチャガチャと音をさせて自転車で通り過ぎていく。2段ベッドの上で寝ている弟が起き上がってベッドの下に降りた。「今日も寒いねえ!」と吐く息は白い。弟を待たず、1階の風呂場の前の洗面所で歯を磨き、顔を洗って居間の食卓に着いた。父は丹前の両袖に手を入れ、昆布茶を前に食卓用のおこたに座って、食膳が整うのを待っている。「おはよう!」と声を掛けてから父の真向かいに座った。「今日学校から帰ったらできた絵を見せちゃおき!」と父は言った。今度手掛けていた絵が出来上がったらしい。和風の絵は諦めて、印象を基にしたデザイン画を描いていた。モチーフは馬からろばになっていた。森の中をとぼとぼ歩くろばの絵だと言った。弟が洗顔を済ませ食卓に着き、母が台所から食膳をおこたの上に整えた。食事が終わった父は爪楊枝で「しーはーしーはー」しながら昆布茶を飲み、皆食事を終えた。駐車場で弟と二人自転車に跨り、それぞれ学校へと出かけた、1時間目、重松先生の英語は副読本の「ブラック・ビューティー」の音読と訳読だった。僕はこの副読本の日本語訳「黒馬物語」を岩波文庫で見つけていた。帳面にバッチリ今日やる部分の和訳を書き写していた。重松先生は見事なカナダ訛りで英文を読み進んだ。「はい、では古谷君5行目まで訳をお願いします。」と古谷君に当てた。流れから言って次に僕が当てられるのは確実だった。しかし、余裕しゃくしゃく。古谷君は訥々と訳を付けていった。4行目、5行、6行、7,8行目と当てられたところよりずっと先まで訳を付けた。「十分よ!古谷君」と重松先生は古谷君が訳すのを押しとどめた。「次、浦成り君」。僕は帳面の訳を見たが古谷君が訳しすぎたおかげで帳面の僕の訳はあと1行ぐらいしかできていない。1行、帳面を見て訳し、後は自力で訳すしかない。「謀られたか!これは」と心中思いながら、意識が遠のき頭が真っ白になり、無言。時間は刻々と過ぎてゆく。「最初の1行は良かったのに!」と重松先生は呆然と立ち尽くす僕を教壇から席に戻させた。2時限目は保健体育でサッカーをした。男子生徒は南体育館で着替え、グラウンドのサッカーコート中央ラインに集合後、赤き血のイレブンキックオフ。西野先生は笛を首にぶら下げてコート内を走り回る。フォワードを務める田内が新調したサッカーシューズをよしよしと撫でながら元気よく走りだした。僕はゴールキーパーを務めることになった。中学の時からサッカーではゴールキーパーを務めていた。時々転がってくる球を受けて、中央ラインに向けて投げる。キック力があまりないので投げた方が肩がよい分距離が出るのである。田内がゴールを決め、我がチームが1-0で勝っていた。相手方のキーパーがゴールキックで球を中央ライン付近まで蹴り返した。あれよ、あれよという間にゴール付近でのもつれ合いになり、緊張して球の行方を見ていたが、目の前で「石本ハンド!」と西野先生が笛を吹き鳴らした。ゴール前のフリーキックとなった。至近距離から蹴られるので、球筋を見てから飛んでいたのでは間に合わない。キッカーの弘瀬君が球を蹴った。球が蹴られた瞬間僕は右に飛んだ。「バッ、ズサッ」と僕は飛んで砂煙を上げ乍ら右に落ち、球は左側のゴール隅にころころと転がった。石本が僕の右前で手を叩き「かっこえい、はははは」と腹を抱えて笑っていた。3時限目、昼休み、4時限、5時限と事故もなく授業が終わり部室へと向かった。部室に入るといつものぶよぶよした数人の生白い男の上半身が目に入った。「全然引き締まった筋肉質にならんなあ!」と心の中で稽古不足を非難しながら道着に着替えた。部活が終わって、帯屋町アーケードより南入るの金高堂書店のはす向かいにある「井上書店」という古本屋に立ち寄った。井上書店の学習参考書のコーナーのところで同じクラスの岡崎君が科学振興社版矢野健太郎の「解法のテクニーク 数学Ⅰ」を近眼の目を凝らして見ていた。僕は声を掛けずに50円コーナーを見ていたが目ぼしい本は見つからなかった。2年生になる時にはオリエンテーションがあって文系クラスと、理系クラスに分かれるそうなのでそろそろ学校でも受験体制に入るのだろう。

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