モッツアレラチーズ2 弐拾壱

中三の新学期が始まってからもう1月余りたち、転校生もクラスになじんできた。担任が大平先生に変わり、教科の先生もわずかながら移動があった。学校の駐輪場ではもう初夏のような若葉の香りが漂っていた。3年3ホームのクラスルームへと階段を上がっていった。部屋に入る途中で新学期に入ってからもしばらく学校を欠席していた本山とすれ違った。本山は欠席が多いので今後の出席日数次第では卒業が危ぶまれているバブレ者だった。始業時間が近づいてきて生徒が次第に席についている時、僕は本山が大平先生が腰を掛けるバネの入った椅子の上に画鋲をそっと置くのを見た。どうしようと思う間もなく先生が戸を引いて教室の中に入って来て、カバンと何やら印刷されたわら半紙を机の上に置き、椅子を引いて座った。「うっ」という小さな叫び声とともに先生は椅子から尻を離した。先生は尻から画鋲を取って机の引き出しに入れた。僕は先生に注意を喚起する声を掛けられなかったことを悔やんだが後の祭りだった。本山は高く「わはははは」と豪快に笑った。先生はにこやかな表情を作って本山の方を見て優しく「こんなことをしたらいかんよ。」と声をかけた。ホームルームの時間が終わって、1時間目は音楽室にて大平先生の音楽の時間である。大平先生は音楽が専門でクラリネットの奏者だがもちろんピアノも弾ける。先生は教科書に載っている楽曲を生徒が斉唱する前に必ず自分でピアノを弾きながら歌っていた。「森の陰に真白く見える村の教会♪♪空に響く塔の鐘の音♪♪窓を洩る歌の調べ♪♪」「をもる」を歯切れよーく」「さんはい!」といった調子である。先生の音楽の授業はなかなか生徒にとっても楽しいものであった。5時間目の授業が終わって、終業の挨拶をしてから部室に向かった。部室で1級の昇級試験を受けるものだけ練習をするという話を聞いた。僕はすでに1級は取っていたので7月に初段の昇段試験を受けるつもりだった。部室に勝賀瀬君がまた来ていたので話をしていると万々に美味しいお好み焼きの店があるので行こうという話になった。駐輪場から学校を出てとぼとぼと2人で万々の方へと歩いて行った。歩いている途中少し前を女子バレー部の高橋が歩いていた。高橋は校内1の美女と言われている山下と2枚看板の校内では有名な選手であった。この二人はともに「ケイコ」という名前だったので「ヤマケイ」「オケイ」というニックネームで呼ばれていた。女子中学バレーのアタックナンバー2である。実は勝賀瀬君はこの「オケイ」のファンだったのでこれを機と悟り、カバンから色紙とマジックを取り出して「オケイ」に小走りで近づきサインを求めた。二人は二言三言言葉を交わしていたが、長身の高橋は心なしか厳敷表情をしていたので僕は勝賀瀬君の目論見が不調に終わったのを感じた。勝賀瀬君は色紙とマジックをカバンの中にしまい込むととぼとぼと僕の方に近づいてきた。「してくれんかったが」と僕が言うと「今度はヤマケイにもらおう」と気を取り直していた。万々の四つ角を過ぎ小さなお好み焼き屋さんが見えてきた。店名の何も書いていない。サッシのガラス戸を引いて店内に入った。店内にはカウンターと鉄板の付いたテーブルが2つあるが狭かった。店内に貼られているお品書きを見て「イカ玉」を2人とも注文した。やがてアルマイトの器に練られたメリケン粉と具材の入ったものが運ばれてきた。傍らにあった油を引き、アルマイトの器からメリケン粉を流し広げてじゅーじゅーと焼いた。僕は生焼けでひっくり返したために形が崩れどうしようもない形になった。一方勝賀瀬君は気長に焼いて、よく焼きあがるまで待って返したので純円のお好み焼きができていた。しかし、とんかつソースを塗って青のりとかつお節をかけてみると僕のお好み焼きの方がなんとなく実力がありそうだった。お好み焼きを食べ終わってから氷小豆を食べるとお腹がちゃぼん、ちゃぼん鳴っていた。帰ってからまたパンシロンを飲もう、そう思いながら店を出て、勝賀瀬君と2人自転車を扱ぎ出した。

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