モッツアレラチーズ2 肆

7月16日、17日と中間テストがあって、24日から夏休みに入る。夏休みの課題はそれほどないのだが、少し分厚いワークブックを仕上げたり、写生画を描いたりしなければならない。それと夏休みの間に数日間ある登校日、秋の市の体育祭へ向けての部活がある。剣道部の中には小学生の時から町の道場に通っていた生徒もいたが、僕は全く未経験で始めたのでまだ3か月余りである。市の体育祭は5人の正選手が、先鋒、次鋒、中堅、副将、大将として出場するが2,3年生主体で構成される。僕はもちろん大会の出場の見込みはないのだが、夏休みが終わって、正選手を決める剣道部内の総当たりの試合が予定されていた。1年生が2,3年生に試合で勝って正選手に選ばれることはそうないのだが試合の時の調子や1年生の場合上達ぶりが著しければ全く可能性がないわけではない。米津先生は正選手への抜擢をよくされると聞いていたので1年生ながら夏休みの部活には力を入れようと考えていた。オーソドックスな剣道の構えは中段、上段、下段の3種類だが、中学生は大方中段の構えをとる。僕も3か月たって中段に決まってきた。上背があまりないし、性格的に攻撃と防御のバランスが取れるほうが良いので自然にそうなってきたのである。その日、部活が終わってからも1年2組でのクラスでの代表委員の用事があり6時過ぎに中庭にあるごみの焼却炉に向かっていた。グランドを横切っていると途中野球部員が練習を終えて帰宅途中であった。もうあたりはかなり薄暗くなっていた。焼却炉の10メートルほど手前で野球部員の倉田が僕の前に立ちふさがった。「話がある、ちょっとついてこい。」と言われたので中庭の方についていった。もうあたりには人影はなかった。中庭についていくと、倉田は突然振り返り、僕の胸ぐらをつかんでいった。「おんしゃー、偉そうなぞ!」その腕にはかなり強く力が入っていたので、僕も反射的に倉田の胸ぐらをつかみ返した。倉田は背丈は低いが体つきはがっちりした筋肉質の男だった。胸ぐらをつかみあった感じでは倉田の腕っぷしはぼくと同等かそれ以上だと体感した。「えらそうな」と言われてぼくには思い当たるところはなかったが、代表委員をしていたので日頃高飛車な口調になることが多いのかもしれないと脳裏に浮かんだ。胸ぐらを掴まれて瞬間的に相手に対する心理的攻撃のエネルギーが沸き起こったが、相手の腕っぷしが存外に強かったことと日頃話をすることもない男なのでと惑いの気持ちが戦いのエネルギーの火を消した。「それぞれ立場というものがあるろう。」僕はこの闘争を回避するために説得に出た。もちろん胸ぐらはつかんだままである。「俺は難しいことはことはわからん」と言って、さらに興奮気味につかんでいる手に力が入った。僕は完全に怒りの灯が消えて胸ぐらを掴んでいる手を離した。「殴らしてもらうぞ!」そう言ったかと思うと拳固で僕の顔面を一撃した。。僕はよろめいて棒立ちになっていた。倉田はぼくの胸ぐらを掴んでいる手を放し。鞄を拾って、去っていった。反撃ができない悔しさは心の奥にあったかもしれないが、戦うための心の火が消えていたのでどうしようもなかった。僕はとぼとぼと南の校門の近くの自転車置き場で自転車に乗り家路に向かった。途中出血はしていなかったが殴られたところが痛み次第に脹れてくるのがわかった。家に帰って1階の玄関で父と顔を合わせた時、父は僕の顔を見て、薄ら笑いを浮かべ、「喧嘩でもしてたが」 と僕の肩に軽く手を置いて言い、3階のアトリエに上がっていった。   

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