モッツァレラチーズ11

小学校5年生の夏休みは始まったばかりだった。各地で梅雨明け宣言が終わり、猛暑が続き始めていた。朝、1階のダイニングで家族4人揃って朝食を済ませた後で、進学塾の夏期講習に出かける準備をすることになった。私は土佐中学や学芸中学などの私立の中学に進学するつもりはなかったが、5年生になると教科書の読み込みだけでは解答できない算数の文章題などが学校のテストでも出てき始めていたので、教科書より少し高度な事柄を学びたかったからである。「学研」という進学塾の夏期講習は3クラスに分かれていて、内1クラスは選抜クラスであった。事前に行われた選抜テストで、私は40人ほどからなる選抜クラスに組み込まれていた。学校の成績からすると、この選抜クラスでは私の学力は最低のレベルだった。午前10時から昼休みを挟んで午後3時まで4教科の講習がある。私は革の手提カバンに筆箱と下敷きと読みなれた教科書、そして母の作ってくれたお弁当を入れていた。弟と共同の3階の部屋で、弟は鉄人28号のプラモデルを組み立てている。マブチモーターで動くプラモデルで小学校3年生の弟にとってはかなり技術を要するものである。鉄人28号は60年代のヒーローで、このプラモデルは父が知人から頂いた当時としてはかなりレアなものであった。午前9時半には父が車で中島町にある「学研」まで乗せて行ってくれた。3階建のビルに150人ほどの小学生が其々のクラスに分かれて集まっていた。授業では学校では教えてくれない算数の文章題の解き方などを教えてくれた。演習する問題は主に土佐中学と学芸中学の入試で出題された問題であった。社会などの知識問題も学校では聞いたことのないものがたくさんあった。私は日頃教科書しか読んだことがなかったのでいい刺激になり、授業を楽しむことができた。昼休みなって教室でお弁当を広げた。私のお弁当は同じクラスで顔なじみの生徒にからかわれた。母の作ってくれた私のお弁当は白いご飯と卵焼きだけっだったからである。母は炊事が苦手で、作ってくれるお弁当はいつもこんな風だった。私は少し母が悲しかった。午後3時で授業が終わり、歩いて永国寺の家に帰った。大橋通りを通って、15分ほどで家に着いた。3階の部屋に上がると弟はずっとプラモデルを組み立てていた。もう完成間近で鉄人の形ができていた。私は父のアトリエからモンドリアンの作品集を借りてきて眺めた。午後6時から家族4人揃って外食に出掛けることになった。京町にある「しのぶ寿司」という京都にフランチャイズを持つチェーン店である。父のホンダクーペを播磨屋町の駐車場において、歩いてアーケードをくぐり、「しのぶ寿司」に着いた。1階のテーブルで家族4人がそれぞ注文をした。私と弟はお子様ランチ、母はお赤飯、父は寿司セットを注文した。私と弟と母の注文した品はすぐに運ばれた来た。3人が食べ終わっても、父の注文した寿司セットは運ばれてこなかった。40分ほどして苛立った父はウェイトレスに注文を確認した。もうすぐできるという事であった。さらに20分が経過して、父はもう帰ろうとうろたえていた。そこに寿司セットがすっと運ばれて、父の前に置かれた。これは外食産業のモッツァレラチーズである。外食産業は時間の遅延のしわ寄せを父に食わせた。父はほとんど味のわからない寿司セットを食べ、そそくさと店を後にした。帰りの車の中で父の横顔にはご飯粒が付いていた。

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