モッツァレラチーズ8

小学校4年生の夏休みは7月の24日から始まった。この当時、私はあまりスポーツはせず、誘われて野球の練習や試合に参加するほかは父と高知城公園の周りを散歩するくらいだった。だが、夏休みはプールに泳ぎに行くことがあった。泳げるプールは時間制限で解放されている学校のプールと柳原にある市営プール、後桟橋通りの県民プールがあった。その日は、少年野球の大会も終わっていたので、学校の夏休みの宿題に取り組むほかには特に予定はなかった。午前中は家族4人揃って朝食を済ませてから、子供部屋の掃除と3階の廊下の掃除をした。掃除が終わって、ソファに座りのんびり時間を進ませた。絨毯の上にいつも使っているスケッチブックが置いてあったので取り上げて、パラパラめくるといくつか気に入っているデッサンがあったが、まだ色づけはしていなかった。花瓶に挿してあったマーガレットの花の絵があった。机から絵筆とパレットを取り出した。マーガレットの花の色は白だったが、パレットに黄色のいい色が出ていたので薄く延ばしてデッサンの花の部分に塗りつけた。デッサンがうまく描けていれば、薄く塗ると見栄えが良いからである。休みはいつもこうして時間が過ぎていく。昼食を済ませて、午後1時から学校のプールに行った。追手前小学校のプールは追手筋沿いの角にあった。校舎で着替えをして、渡り廊下を通ってプールに出た。海水パンツと黄色のスイミングキャップを被っていた。生徒は泳ぐ時赤色、黄色、白色のスイミングキャップを着用しなければならなかった。キャップの色は泳げる距離をあらわしており、赤は25m未満、黄色は25m以上50メートル未満、白は50メートル以上である。私は50メートル以上泳げる力はあったが、いつも余裕を持って30メートルほどで泳ぐのをやめていた。それで、黄色のスイミングキャップを被っていたのである。学校のプールは普通の25メートルプールであったが、私は25mを何回か平泳ぎやクロール泳ぎ渡った。泳ぐ時はいつもいい泳ぎを考えて泳いでいた。小学生の時、私はあまり体力がなかったので、スポーツは考えながらするものだと思っていたからである。プールではいつも1時間ほど何回か休憩を入れながら泳いだ。水泳はエネルギーがあまりない私にとってはかなり大変だったからである。2時頃、他の生徒たちを残して一人でプールから上がり、校舎へ戻って着替えをした。永国寺の自宅に帰り着いたのは2時半過ぎだった。子供部屋のソファに座って、お茶を飲んだ。特に、することもなかったので父のアトリエのドアをノックした。父は3脚のイーゼルに載った描きかけの絵に筆を入れようと考え込んでいた。一番大事な部分である馬のデザインである。父は思い立って、筆をとり、描くタイミングを測っていた。その時、遠くのほうから青竹の物干しざおを売る声が聞こえてきた。父が筆を入れようとすると物干しざお売りの拡声器の音が大きくなり、父は集中力を失って、筆を置きそばに置いてあるソファに腰をかけた。しばらくして、父は気を取り直し絵筆を執った。今一度、集中して描くタイミングを測っていた。するとまた遠くのほうから物干しざお売りの声が聞こえてきて、次第に大きくなり、うるさく感じるほどになった。父はやや集中力を欠いたかのように見えたが、構わず絵筆を進めた。描くとき父の手は震えていた。これは物干しざお売りのモッツァレラチーズである。物干しざお売りは父仕事の充実感を奪い自分の懐に入れた。描き終わった父の絵を覘いてみると馬のデザインの位置が少しずれて歪んでいた。

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